事業概要
事業概要
1.組合設立の目的
飼育動物向けに未だ確立されていない、自由診療における安全かつ有効な細胞治療サービスを提供できる仕組みを開発し、実用化することを目的として、細胞の開発及び臨床研究を行い、また自主的な評価基準を整備するための試験研究等を行う。
2.実用化の方向性
Ⅰ.組合員のために、飼育動物向け細胞治療サービスを確立する上で必要となる、均質かつ安全な動物細胞の培養要件、品質保証要件、搬送についての要件を確立すること。
Ⅱ.組合員のために、飼育動物向け細胞治療サービスを確立する上で必要となる、疾患動物の診断法及び治療法を開発するとともに、適応疾患、用法用量等のルールを明確化し、周知すること。
Ⅲ.組合員のために、上記Ⅰ及びⅡから得られたデータやノウハウを蓄積し、分析・評価することにより、安全かつ有効な飼育動物向け細胞治療サービスを確立するために必要となる自主的な評価基準を整備すること。
スペシャリストによる品質管理



安全かつ均一な間葉系幹細胞(MSC)を提供するために、ヒトの再生医療の基準を踏まえた設備・規格等で、適切に清浄度管理された細胞培養施設を用いて、獣医師と共に専門技術員が培養・管理しています。
組織図

再生医療とは
再生医療(幹細胞療法)とは

ほ乳類の身体には、組織の種となる幹細胞と呼ばれる細胞が存在します。中でも、身体の組織へ細胞を供給したり、身体の環境を整えたりする役割をもつモノを総称して体性幹細胞と呼びます。
幹細胞療法は、この体性幹細胞を体外で人工的に培養し、身体に投与する治療法で、悪い箇所を叩くことが中心の化学的な薬剤治療とは異なるメカニズムで、身体が本来持つ自然治癒力を利用することが大きな特徴です。
自家細胞と他家細胞の違い


幹細胞療法では、患者(イヌ・ネコ)自身の組織を採取して細胞を培養し、元の身体に戻す方法を「自家」細胞移植といい、他の個体から採取された組織から培養した細胞を患者に投与する方法を「他家」細胞移植といいます。
一般的に、他家の細胞は、患者の免疫により直ちに排除されてしまいますが、間葉系幹細胞(以下、MSC)は排除されにくい性質を持っていて、他家細胞移植が可能となっています。
他家細胞移植のメリットは、あらかじめ保管しておいたMSCを必要なときに用意できる点です。
そのため、当組合の幹細胞療法(臨床研究)では、他家細胞移植を採用しています。
投与方法


当組合の幹細胞療法(臨床研究)の細胞投与は点滴を中心に行っております。
※疾患によっては、局所投与を推奨するものもあります。
点滴は一般的な手術や麻酔を伴う局所投与などに比べると体への負担が少なく、多くの場合は腕の血管(一般の動物病院で採血する血管)等へ投与することで終了します。
検査や点滴投与などの一連の処置は半日〜1日程度で終了します。
間葉系幹細胞(MSC)
間葉系幹細胞(MSC)とは


間葉系幹細胞(以下、MSC)は、骨髄や脂肪組織に存在する体性幹細胞で、骨や脂肪、軟骨、血管などの様々な組織に変化する能力を持ちます。更に、MSCは、サイトカインと呼ばれる生理活性物質を分泌し、免疫のバランスを調整したり、炎症を抑えたり、身体の組織を修復したりする働きを持ちます。細胞治療は、このMSCの働きを利用することで、病気の症状の緩和や従来の薬の投与量の軽減など効果が期待でき、獣医療分野では、主に自己免疫疾患や外科症例などへの適⽤が報告されています。
臨床研究対象疾患と投与方法
2025年4月現在、当組合で実施している幹細胞療法の臨床研究対象疾患は、以下の通りです。
イヌ
消化器疾患 | 慢性腸症(CE) |
---|---|
肝胆膵疾患 | 肝炎、膵炎 |
血液疾患 | 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、免疫介在性血小板減少症(IMTP)、非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)、赤芽球癆(PRCA)、再生不良性貧血(AA) |
内分泌疾患 | 糖尿病 |
泌尿器疾患 | 慢性腎臓病、急性腎障害 |
神経疾患 | 椎間板ヘルニア、非感染性髄膜脳脊髄炎、外傷性脊髄損傷 |
骨・関節疾患 | 関節炎(変形性関節症・免疫介在性多発性関節炎) |
皮膚疾患 | アトピー性皮膚炎、天疱瘡(尋常性、落葉状) |
眼科疾患 | 乾性角結膜炎 |
ネコ
消化器疾患 | 慢性腸症 |
---|---|
肝胆膵疾患 | 胆管肝炎、膵炎 |
血液疾患 | 免疫介在性溶血性貧血(IMHA) |
内分泌疾患 | 膵炎続発性糖尿病 |
泌尿器疾患 | 慢性腎臓病、急性腎障害 |
呼吸器疾患 | 喘息 |
神経疾患 | 非感染性髄膜脳脊髄脳炎、外傷性脊髄損傷 |
骨・関節疾患 | 関節炎(変形性関節症、免疫介在性多発性関節炎) |
皮膚疾患 | 天疱瘡(尋常性、落葉状) |
口腔疾患 | 慢性口内炎 |
感染症 | 猫伝染性腹膜炎 ※wet型のみ |
上記以外の疾患についても、順次拡大していく予定です
血小板由来成長因子(PGF)
イヌ血小板由来成長因子(PGF)とは
血小板が豊富に含まれている多血小板血漿(PRP)から特許技術1) を用いて「成長因子」を抽出し、凍結乾燥した濃縮物を投与する治療法です。
血小板由来の成長因子には組織修復促進効果と抗炎症効果が報告されており、
ヒト領域ではこの特許技術1) を用いて血液加工した凍結乾燥物を変形性関節症などの疾患を中心に数多くの投与実績が報告されており、重篤な有害事象は報告されていません。
本療法はこの特許技術1)をイヌに応用し、臨床研究を実施しております。
1):セルソース株式会社が保有する特許(特許第6391872号)
特許技術1)を用いた血液加工フロー

イヌ血小板由来成長因子療法の特徴

Point 1 設備投資不要
健康な犬(他家)から採取した血液を使用するため、届いたイヌ血小板由来成長因子を生理食塩水に溶解するだけで投与が可能です
Point 2 室温保管が可能
凍結乾燥処理をしているため、室温での保管が可能*です
*:溶解後は各疾患の治療手順に沿って、管理ください
Point 3 疼痛が少ない優しい治療
ヒト領域では従来P R Pより疼痛が少ないことが報告されています2)
2):松田芳和 JOSKAS. Vol46 : 589~596 2021 開業医視点からみるバイオセラピー治療の適応と可能性-血小板由来成分濃縮物(PFC-FD)と自己タンパク質溶液(APS)の治療成績
臨床研究対象疾患と投与方法
2025年4月現在、当組合で実施しているイヌ血小板由来成長因子療法の臨床研究対象疾患と投与方法は、以下の通りです。
イヌ
対象疾患 | 投与方法 | |
---|---|---|
関節疾患 | 変形性関節症 | 関節腔内投与 |
眼科疾患 | 乾性角結膜炎 | 点眼投与 |
角膜潰瘍 | 点眼投与 |
上記以外の疾患についても、順次拡大していく予定です。